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執筆者の写真小野理恵 Ono Rie

作家の内側を通る


梅津庸一氏の個展「ポリネーター」をワタリウム美術館で観た。それにより想起した、私の勝手なつぶやき。


私が良いと思う作家は、

レンブラント、ジャコメッティ、ゴッホ、ルドン、マーク·ロスコ、岸田劉生、麻生三郎、三岸節子、鴨居玲、難波田龍起…である。

共通するのは、作品が「作家の内側を通って生じた」と感じられること。それは、作家の内省、葛藤、息·血·肉、泥臭さを感じさせること。そういう作品に私は「グッとくる」。

例えばレンブラントは内省的で葛藤を感じるが、ベラスケスは外向的で戦略的。

ジャクソン·ポロックは外向的だが、マーク·ロスコは内省的。

「グッとくる」という感覚を大事にしている。「グッとくる」要素の中に、時代を超えた普遍的な良さがあると考えている。そこを目指してきた。


私は2002年〜2011年の10年間、美術から離れていた。制作をせず、観ることもしなかった。

そして2012年活動を再開して驚いた。現代美術と言われる作品は、キレイでかわいくてキャッチーでわかりやすい作品ばかりだ。

もはや泥臭さは古さでしかないのか?

いつからこうなった?


村上隆氏と奈良美智氏と草間彌生氏の存在が巨大になっていることにも驚いた。彼らの影響でこうなっているのか?

村上隆氏のN.Y.での業績は認めざるを得ない。しかし作品は全く良くない。資本主義の厭らしさに満ちていて直視できない。持ち上げられ、誇大な存在になりすぎている。

奈良美智氏も似たパターン。作品の良さはわからないでもないが、あそこまでの価値は無い。

草間彌生氏の凄さは特に若い頃の作品に感じる。近年の市場での活躍はプロデュースの為せる技と言えるのではないか。

彼らを評価する人や作品·グッズを買う人が催眠術にでもかかっているかのように見える。


コマーシャルギャラリーの存在が大きいのだろうか?アートマーケットの影響だろうか?

かつて私が目指していた良い作品は何処へ行ってしまったのか??

彼らの薄っぺらさに皆は気づかないのか??

市場でもてはやされているものを追従するほど作家たちは腑抜けなのか??


10年のブランクで浦島太郎状態なだけなのか…??それは否めない。否めないにしても、酷すぎない?


自分はご時世に合わせられる技能は無い。自分の思う普遍的な良さを目指すしかない。


このように日本の現代美術に落胆し戸惑い怒りすら感じていた時、梅津庸一氏とパープルームを知った。

ここに本物がいた!と思った。

それは、web美術手帖の2020年2月、長谷川繁氏と梅津氏の対談記事だった。

かなり先輩である長谷川氏に対して投げかけた指摘の鋭さで梅津庸一氏に興味を持った。「酷いなあ。」と言われながらも許されているのも凄い。さらに、相模原市民ギャラリーで観た日曜画家を評価し「表現者は街に潜伏している。それはあなたのことであり、わたしのことでもある。」をパープルームギャラリーで企画したということから興味を強くした。

私には日曜画家の絵に感動させられた経験が多数あったから。

そしてパープルームを知るためにTwitterを始めた。You TubeでパープルームTVや、過去の展示の映像、梅津氏の過去の講演を観た。

それによっていろいろな作家を知り、10年のブランクの間に起こったことを知り、美大時代にも不足していた美術史を知った。

梅津氏の挙げる作家、展示に呼ぶ作家、皆良い。不完全でも惹かれるものがある。

梅津氏の作品、パープルームメンバーの作品、皆良い。

日本の美術の希望だと思った。


梅津庸一個展「ボリネーター」は、まさに作家の内側を通る作品展だ。

正直なところ、恥ずかしくなり

気持ち悪いくらいだった。

梅津氏が時々言っている、「恥ずかしい部分もさらけ出していく」「ダメなところも抱え込んでいく」「漏れている」というのを自ら体現していると感じた。

美術史に擬態した作品で有名だが、

今回の展示で、

梅津氏自身の個人的な必要から美術に取り組んでいると感じた。

それでいて、黒田清輝とラファエル·コラン、パウル・クレー的?、安井賞的?、新しい具象、マイクロポップ?、パフォーマンスと映像、民藝、、、など美術史の様々な表現が散りばめられている。

この中を鑑賞しながら浮遊することで、

いつの間にか自分の中の作家性が刺激され、様々な美術の表現を取り込んでいる。

これは計算されたものなのか?そうだとすると恐ろしい。たぶん、きっちりした計算ではない、が、考えられた企てだろう。


何度も入れるパスポートにすれば良かったかもしれない。

観るたびに感じることは変わると思われる。




































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